日商簿記3級の主役「商品売買」
前回の復習
- 取引が発生したら仕訳を行う
- 仕訳のルールは3つ
- 取引は借方、貸方に分けて記入
- 記入の位置はホームポジションに従う
- 借方、貸方それぞれの合計は一致
- 仕訳けたら勘定口座に転機する
小売業の基本は仕入れて売る「商品売買」
日商簿記3級では小売業を前提としているそうで、つまり商品売買は簿記の主役になります。
早速、小売業者の立場で、メーカーから商品を仕入れ、顧客に商品を売る事を想定してみましょう。下図のように、①¥100で商品を仕入れ、②¥120で商品を販売した場合、差額の¥20が利益になりますね。
このケースにおける仕訳はどのようにしたら良いのでしょう?
簿記では2通りの方法があるようですが、試験では後述する「三分法」を主に扱うそうです。
仕訳の方法(1)分記法
商品を仕入れ(①の取引)では、現金¥100を支払い(資産 ↓)、¥100の商品を購入(資産 ↑)しているので
商品 | 100 | 現金 | 100 |
となります。
《復習》資産のホームポジションは左側なので、増えた場合は借方(左側)に、減った場合は貸方(右側)に記入する。
続いて、商品の販売(②の取引)では、商品を¥120で販売し、現金¥120を得ている(資産 ↑)のですが、元々商品は¥100(資産 ↓)で、利益が¥20(収益 ↑)のため
現金 | 120 | 商品 | 100 |
商品売買益 | 20 |
となります。
《復習》収益のホームポジションは右側なので、増えた場合は貸方(右側)に、減った場合は借方(左側)に記入する。
このように、仕入れた品を「商品」として資産に記録し、売れるたびに利益を「商品売買益」として収益に計上する方法を「分記法」と言います。
この分記法の大きな欠点は、仕入れた商品一つ一つの原価を把握しておく必要があり、日々の仕入れ販売に伴う多くの仕訳において、効率が非常に悪いという点です。
そこで、より合理的な仕訳の方法として次の「三分法」が使われます。
仕訳の方法(2)三分法
分記法の欠点を解消する三分法は
- 仕入れた商品は「費用」(「仕入」という勘定科目を使う)
- 商品を販売したら全額を「収益」にする(「売上」という勘定科目を使う)
という計上の仕方をします。
先ほどのケースについて、三分法を用いた仕訳を行うと
商品の仕入れ(①の取引)では、現金¥100を支払い(資産 ↓)、¥100の商品を仕入れている(費用 ↑)しているので
仕入 | 100 | 現金 | 100 |
となり
商品の販売(②の取引)では、商品を¥120で販売し(収益 ↑)、現金¥120を得ているので
現金 | 120 | 売上 | 120 |
と計上します。
仕入れた商品を資産に計上しないのは、すぐに販売する事が目的(資産として蓄えるものではない)だからです。
分記法で把握しておく必要のあった原価は不要になるため、手間がかかりません。
日商簿記3級では「三分法」が大事
先にも述べた通り日商簿記3級では、三分法の出題が大半を占めるそうで、問題に「仕入れた」があれば「仕入(費用)」、「売り上げた」とあれば「売上(収益)」で処理すれば良いそうです。
仕入れに関する諸費用は?
さて、仕入れに際して商品を運ぶ必要があります。メーカーから小売店までの運送料は通常小売店が負担します。運送料が発生したらどう計上すれば良いのでしょうか?
運送料を別に把握するのは面倒なため、運送料に関わらず仕入れに関する諸費用はすべて「仕入」に含めて処理するのだそうです。
例えば、今回のケースで、送料が¥1000だった場合は、以下のように処理します。
仕入 | 1100 | 現金 | 1100 |
今回のまとめ と 次回予告
日商簿記3級の主役である商品売買について、「分記法」と「三分法」での仕訳の方法について学びました。試験に向けては「三分法」(仕入れた商品は「仕入」で費用に計上、販売したら全額を「売上」として収益に計上)を理解しておけば良いようです。
次回は、「掛け」について書いてみたいと思います。掛けは商品と現金を同時に授受しない取引です。
参考書籍
この記事を書く上で参考にした書籍とページは以下の通りです。
書名 | 参照先 | |
---|---|---|
第2章 商品売買(case3-6) | p11-17 | |
8コマ 商品売買 | p50-57 |